| 1990 | |||||
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活字にならない物語も
井上陽士郎(平成三年卒) 春のシーズンは全敗した。甲南戦の連敗記録を更新し、四大戦は最下位に終っ た。この惨めな成績の裏には理由がある。リザーブと下級生の育成という大きな 目的があったのだ。 近年、やたら部員数は増えたが、どのポジションも一軍と二軍の力の差が大き かった。一軍の誰かが欠場するとその穴を埋められないまま、試合に負けてい た。そんな層の薄いチームから脱却したくて、ほとんどの選手を試合に出場さ せ、個人個人の能力を伸ばそうとした。 下級生にとって試合に出るのは最高の喜びだろう。フットボールをもっと好き になれ、練習にも熱がこもってくる。試合に出るのを楽しんでもらえればそれで 結構だ。だが、上級生は違う。たとえ自分が出場していなくても、チームは負け たのだ。このチームは弱いのだという事実と付き合っていかねばならない。さら に、そこから各人の弱さについても深く考えるべきである。それをふまえて練習 すれば、必ず勝てるチームになると私は信じていた。 そして秋。誇れる結果もあげられず終わり、優勝できずに、私たちはヘルメッ トを脱いだ。この秋のシーズンについて、私は書くべきことがない。と言うのはあまりに速 く時が過ぎ去ってしまい、大概のことは覚えていないからだ。だが、一つだけ色 はあせたものの頭に残っている話がある。それは前年の試合中に足を骨折したQB の佐藤秀照君についてだ。彼は一年間のブランクを経て、秋の途中から試合に参 加できるようになった。このことはチームに好影響を与え、選手の意気を高め た。少なくともオフェンスの人間にとってはそうであったと記憶している。 他にも多くの選手が怪我をし、強い精神力で復帰を果たしてきた。その度にチ ームに明るい希望を持たせた事もここに記しておく。楽しい重いではなかなか見 当たらないが、思い出すのは反省と心配ばかりだ。我々は先輩の見習うべきところ がわかっていただろうか。後輩は我々の愚かだった所を見抜き、その轍に決して 足を踏み入れてはいけないことに気付いてくれただろうか。特に先輩に対しては、 もっと彼らのためにすべき事があったと後悔している。 最後になるが、私達がフットボールを続けられたのは、やはり多くの人々の情 熱と協力があったからだと思う。監督、コーチ、先輩、後輩に改めて感謝した い。 この四十年史の中には、チームに携わってきた人々の写真や名前が数多く載っ ていることだろう。どうか彼ら一人一人に話しかけてあげてほしい。 記念史は印刷された部分ばかりではないのだ。一人ひとりの心の中に刻まれて いる物語もぜひ読んでもらいたい。
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